
ルドルフ・シュタイナーが目指したアントロポゾフィー(人智学)は、「差異を抱きしめて生きること」と言えるかもしれない。人間は、光と闇、自己と他者、東と西、頭部(知性)と四肢(意志)といった両極性に引き裂かれながら、中心において無数の差異を抱きとめ、一人ひとりの豊かな感情生活を築いていく。
本書では、そうした両極性の一つである「親と教師」をテーマに、世代の異なる二人のアントロポゾーフ(人智学徒)が、まるで往復書簡のように思考を交錯させている。
日本シュタイナー幼児教育協会の入間カイは、四国アントロポゾフィー・クライスの竹下哲生から「親と教師の違いは何か?」と問いを投げかけられて講演を行う。そこから「個人」の側の親と「社会」の側の教師とが、子ども時代を通じて「個の自律」を支え、それが「社会形成」につながる可能性が見えてくる。
それを受けて、竹下は「個人と社会」をテーマに、日本と西洋における家庭、社会の違いを論じ、日本における「個人の誕生」と「世間の社会化」を見つめ、新しい社会形成の可能性を探る。
二人の見解には相違もあるが、日本の現実の中で、個人をベースにアントロポゾフィーを新しく方向づけようとする姿勢は共通している。差異を織りなして編まれた、新しいシュタイナー教育論、アントロポゾフィー論である。
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◆第1章 時代のなかのシュタイナー教育 “妥協”と“個人の意志”
時代や社会とのかかわり/個人の意志と社会のまなざし/日本における“家族”と“社会”/個人の意志/自民党の「憲法改正草案」/いかに個人の意志を働かせるか/ぼく自身の歩み——不登校/英語との出会い/学校と社会/仕事と“妥協”/シュタイナー学校とナチス——教師の決断/不登校——子どもたちの決断/シュタイナーの“妥協”/生きて変化するシュタイナー学校
◆第2章 シュタイナー学校が設立された理由 「個人の意志」の発現に向けて
社会資本としての「個人の意志」/“自由”とは何か?/創造性と依存/蔦森樹さんの本から/行為への愛/“自由への教育”/妥協の条件/自己肯定に到る3段階/“自我”の中身/社会という“母胎”/“母胎”としての家庭/“母胎”としての地域社会/“母胎”としての人類社会
◆第3章 教育から社会形成へ “大人”の仕事について
教育のモットー/親と教師の仕事/環境の創造と大人の自己教育/手本と模倣——自由の基盤/愛される権威——平等の基盤/真実と友愛——愛の基盤/親と教師の違い/社会運動としてのシュタイナー教育
◆社会と個人 〜入間氏への講演依頼の経緯〜
・与えることと与えられること:自己教育と学校教育/エゴイズムの社会的価値
・学校教育から社会生活への移行:社会生活に於ける権威の意味と師弟関係/権威との葛藤と克服
・優劣の有ることと平等であるべきこと:個人の意味と人権意識/会社の家族化と家族の社会化
・親であることと教師であること:世間的な社会を社会的に/社会問題としての教育
◆巻末資料
・付録1 講演後の質疑応答から:“大人”の出発点としてのアントロポゾフィー/意志と責任/“瞑想”や“修行”の意味/大人の行為が子どもを支える/“9歳の危機”/自我と“エネルギー”/「悪」は実在するか?/“個の不在”という力/アントロポゾフィーの“闘い”
・付録2 悪の問題:“天使”という存在/思考、感情、意志との関わり/“天使の影”/“アントロポゾフィー運動の落とし穴”/エゴイズムと民族主義/“共同体の意志”とその影/連帯のための“自己認識”
◆鳥山さんの訃報を聞いて
◆あとがき
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共著:入間カイ
鎌倉市生まれ。 学生時代に不登校を経験し、海外のシュタイナー学校に留学。上智大学で政治学を学んだ後、現在、那須みふじ幼稚園園長。 日本シュタイナー幼児教育協会代表。ゲーテアヌム医学セクション外部研究員。著訳書:『これからのシュタイナー幼児教育』(春秋社)『小児科診察室』(G.ゲーベル共著、水声社) 他。
共著:竹下哲生
1981年香川県生まれ。2000年渡独。2002年キリスト者共同体神学校入学。2004年体調不良により学業を中断し帰国。現在自宅で療養しながら四国でアントロポゾフィー活動に参加。共著『親の仕事、教師の仕事〜教育と社会形成〜』訳書『アトピー性皮膚炎の理解とアントロポゾフィー医療入門』(SAKS-BOOKS)他。
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単行本:164ページ
発行日:2014年5月1日
ISBN:978-4-9906920-5-6
寸法:207 × 138 × 11 mm
© 2014 Kai Iruma, Tezuo Takeshita Printed in Japan
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